歴史小説や時代小説はお好きですか?
韓国の時代劇ドラマや歴史ロマンの映画はよく見るのに、時代小説・歴史小説ってほとんど読むことがありませんでした。
以前からこの小説のタイトルを知っていたのに、歴史&時代小説であることがハードルを高くしていたのです。💦昨年はNHK大河ドラマ「光る君へ」が放送されましたよね。
『くれなゐ君』は七夕におすすめしたい、平安時代を背景にした限りなく純粋で一途な若い男女の恋物語です。
源氏物語第六帖の「末摘花」(すえつむはな)をモチーフに、『くれなゐの君』と呼ばれる常陸宮の深窓の姫君を、まもなく元服を迎える少年・藤原実孝が常陸宮邸の池の傍で偶然姫君を見かけたことがきっかけで、いつしか恋が芽生え、身分違いの恋に翻弄されてゆく二人。溢れ出る大和言葉で綴り、日本語の美しさを再認識させられるような、儚くも揺るぎのない初恋をドラマティックに描いた小説です。
圧倒的映像美と煌めく情景描写があなたを物語の世界へといざなってくれるはず。
できることなら国語の教科書で、学生さんに読んで貰いたいくらい。
先ず、歴史小説は少々苦手という方に、読む前に知っておくと便利なことをいくつか箇条書きにしてみました。読み進めるうえで私がこれは何?と思った装束の専門用語などをリストアップしたものです。理解しておくことで、二人の置かれている状況なども把握でき、物語に没入できると思うのです。
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衵(あこめ)…装束で使われる内着の一種。
出衣(いだしぎぬ)…貴族の男子の晴れの姿の折の、風流な衣服の着方の称。下着の衵(あこめ)の重ねを美麗に仕立て、前身を指貫(さしぬき)に着籠めずに、裾先を袍(ほう)の襴(らん)の下からのぞかせること。
狩衣(かりぎぬ)…平安時代以降の公家の普段着。もともとは狩の時に着用したもの。
直衣(のうし)…平安時代以降、天皇・皇族など身分の高い貴族が用いた平常服。
細長(ほそなが)…平安時代の公家の幼児服と年若い女子の晴れ着。
花橘(はなたちばな)…六月ころ、梢に香りの高い白い五弁の花を咲かせる。昔の恋を追慕させる花。
襲(かさね)の色目…平安時代から貴族の衣装に使われる襲(かさね)の色目の一つ。「表・白、裏・紅梅」といった組み合わせで、主に女性の衣服に用いられた。
薄衣(うすぎぬ)…薄く透き通る絹織物。紗(うすぎぬ) · 紗綾(サや) ·打掛
御簾みす…すだれ
今上帝(きんじょうてい・きんじょうのみかど)…『源氏物語』に登場する四番目の帝で 架空の人物。
公達(きんだち)…貴公子、ご子息
女房…平安時代から江戸時代頃までの貴族社会において、朝廷や貴顕の人々に仕えた奥向きの女官もしくは女性使用人。
女車(おんなぐるま)…宮中の女房などが乗る 牛車 ぎっしゃ 。
中神(なかがみ)…陰陽道(おんようどう)で、八方を運行し、吉凶禍福をつかさどるとされる神
陰陽道(おんみょうどう、おんようどう、いんようどう)…陰陽五行思想を起源として、天文学や暦の知識を駆使し、日時や方角、人事全般の吉凶を占う技術
◆「末摘花」(すえつむはな)について
『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。第六帖。不美人でありながらも生涯光源氏と関わり続けた女性の一人。「末摘花」とは、源氏がこの女性につけたあだ名だそうです。
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◆主な登場人物
千早(ちはや)の君…くれなゐ君 常陸宮の姫君
常陸国太守(ひたちのくにたいしゅ)…千早の父で先帝の第二皇子
常陸宮北の方…千早の母 故式部卿の姫君で生まれつき病弱
藤原実孝(ふじわらのさねたか)…文武両道で宰相の中将、右大将となる
左大将・藤原匡家(ふじわらのまさいえ)…実孝の父
源 雅信(みなもとのまさのぶ)…実孝とは乳兄弟(ちきょうだい)の間柄
周防…実孝の乳母であり雅信の母
津和の君…雅信の叔母
伊勢の君・松河の君…くれなゐ君の側仕え・古参女房
真砂…女童の頃から千早の君に仕える姉妹のような女房
貴宮(あてみや)…前斎宮で先帝の第二皇女。くれなゐ君とうりふたつ
由良の君…前斎宮に仕えた女官
◆『くれなゐ君』日河 翔 著 上巻のあらすじ
くれなゐ君と呼ばれる千早の君は器量が悪く、和歌も詠めず、琴も弾けない変わり者と都で評判の姫君でした。
その姫君が棲む三条邸(常陸宮邸)のお庭は紅葉が美しいことでも有名であった為、藤原実孝は乳兄弟の雅信に行ってみたいと話しておりました。ある日、雅信の叔母がかつて常陸宮家の女房として仕えていた縁で二人は三条邸へお忍びで出かけ、池の傍で花を摘む少女を植栽の間から垣間見ることに。少女と目が合い、慌ててその場を立ち去る時に実孝は父親からもらった大事な扇子を落としてしまうのです。千早はその雅で仄かな香の漂う扇子を拾い、ずっと持っていたのでした。これが元服前の少年と深窓の姫君との運命の出会いでした。
病弱であった北の方様が亡くなられ、出家した常陸宮様も後を追うように亡くなり、身寄りのなくなった少女は父母を弔うため、自らも出家すべく、身辺整理の日々を送っておりました。生前、父である常陸宮と親交のあった実孝から定期的に届く文には目もくれず、側仕えの伊勢に返事を代筆させていた千早でしたが、やがて二人は会うことになります。
お互いを取り巻く状況、つらくて厳しい試練が二人を引き離そうと襲いかかります。
石山寺参詣後、京へ戻る中神が塞がっていて五条別邸に帰れなくなった姫君一行は由良の君を頼り、兵衛佐の別邸にお世話になることに。屋敷の隣の建物から炎が上がり、家人を避難させ、その中に子供の姿がないことに気付いた千早は燃え盛る屋敷の中へと飛び込んで行くのでした。
誠実で一途な実孝の気持ちが自分への哀れみではないことに気付き、火事で死を覚悟した瞬間、薄れゆく意識の中で「もう一度会いたい」と実孝の名を呼ぶ千早。
空耳ではない、くれなゐ君が自分の名を呼ぶ声が聴こえたのだといい、馬にまたがり姫君を救いに行く実孝。
ここまでが上巻(第一帖・垣間見~第十九帖・炎上)のお話です。
物語に登場する女房たちだけでなく、読者をも巻き込むほどのじれったさ、幼い記憶をたぐり寄せながら二人の心はどうなるのかしらと頁を捲らずにはいられませんでした。
この小説の上巻は1日で読み終えましたョ。面白いくらい惹き込まれます!
暑い夏の夜にはエアコンの効いた部屋で静かに読書というのもよいものです。
読んでみようかしら…という方、amazon の kindle で物語の二帖までサンプル読み可能ですのでよろしければ、どうぞ。
今週のお題「最近やっと〇〇しました」